グリーンインフラとは、自然環境が持つ多様な機能をインフラ整備に活用していく考え方であり、持続可能な社会や経済に寄与するものとして注目されています。
これは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、グリーンインフラを取り入れることで、SDGs実現を加速させると期待されています。
取り組み事例
国道289号荷路夫バイパス エコロードの取り組み
一般国道289号線は、新潟県新潟市を起点として、福島県南会津、県南地方を経ていわき市に 至る総延長260kmの道路です。このうちの自然の中を走る約3.6kmの道路「荷路夫バイパスは」自然環境と共存・調和をコン セプトに整備検討が行われ、2010年に開通した区間を指します。
荷路夫地区は、豊かな自然が残されている地域であることから、環境への負担をできるだけ 少なくするため、動植物の生態系など自然環境に配慮した「エコロード」として整備が進められ ました。
この取り組みは、「身近な自然」を守るための「第2世代のエコロードのさきがけ」とされ、今日の「グリーンインフラ」に通じるものと考えられます。
人の利便だけでなく、動物たちにも安全な道を・・・
エコロードの整備に当たっては、行政や地域住民のほか、動物・植物・水環境・建設などの専門家も 参画し、“生き物や自然環境”と“道づくり”従来なら相反する考え方をどう融合できるかのか・・ 幾度となく模索し合い検討が行われました。
開通した現在は、道路横断部に“アーチパス”を用いることで自然に近い川床を保全し、かつ動物も安全 に道路横断機能が整備され、万が一道路に迷い込んだとしても安全に避難できる工夫が施されました。
また、植生環境を保護する取り組みとしては、既存植物の育成分布を調査したうえで、移植・保管・ 再移植することにより豊かな森林環境への復元する工夫も施されました。
そして水棲生物の生息環境も維持されています。
GISを活用した生態系の行動範囲とエコロードデザイン検討
当時ではまだ出始めたばかりのGISを活用し、生態系の行動域のマッピングやエコロードデザインを 3次元による走行シミュレーション解析を行いデザイン検討を行われました。
これにより、専門家の趣旨や道路の完成形をイメージし易くなり、道づくり参加者を一人も取り残す ことの無いよう工夫されました。
次世代を担う技術者への生きる見本として・・・
「荷路夫バイパス(エコロード)」は完成後インフォメーションセンターが立ち上げられました。一般の人や学校教育機関など様々な方々が訪れ、環境保全とインフラの調和の学びの場として活用され地域コミュニティの活性化、子供たちの環境教育にも資する取り組みとして実施されました。
荷路夫エコロードは、次世代の環境に配慮したインフラ整備のモデルとして現在も生き続けています。
今後はこれまでの経験を活かし、気象変動への対処やグリーン社会の実現に向け、多様なフィールドでグリーンインフラに係る業務に取り組んでまいります。